クモリン 小さな生き物のつぶやき

つぶやくように詩を作っていきたいです

2020-01-01から1年間の記事一覧

最期の場所 セミ

最期の場所 セミ どこにそんな力が残っていたのだろう 道に横たわっていたアブラゼミ 命がないものと思って 手に乗せた その手を払いのけるように 飛んでいった 穏やかに最期を迎える場所を目指して 飛んでいった

お得な食べ物

お得な食べ物 中身を食べた貝殻を きれいに洗って 乾かして 布の切れ端で包み込み 糸で縫う 紐を付ければ ちょっとした アクセサリーの出来上がり 食べ終わった後も楽しめる お得な食べ物だと 子どもの頃思ってた アサリのお味噌汁を見るたび思い出す。

アカボシゴマダラが飛んでいく

アカボシゴマダラが飛んでいく 千葉県北西部 アカボシゴマダラが飛んでいる このチョウを初めて見たのは…… 東京都日野市 多摩動物公園 木々が茂るユキヒョウ舎前 手すりに止まっていた 外国からの観光客らしき人が 「キレイデスネ」 と言った 私は見たことが…

ペン型注射器

ペン型注射器 リウマチの生物学的製剤の自己注射 十余年 シリンジ型を週二回 今は ペン型を週一回 補助具を使うシリンジ型では液漏れさせたこともあったっけ パートの時給 十時間分ぐらいが無駄に消えた…… ペン型は 打つ前の空気抜きも必要ない キャップを取…

距離

距離 高校の時 距離がなくなるのを知った 的に向かい 揖 足踏み 胴造り 弓構え 打起し 引き分け 会 離れ 残身 二十八メートルの矢道はなくなり 的しか存在しない 矢筒…… 高校卒業してから弓を引いていない。何十年も。 そして、今は リウマチであちこちの関…

『茶碗の欠片 杉山なか女と地方病(日本住血吸虫病)橘田活子叙事詩集』

昨年、寄生虫館に行った時 日本住血吸虫の特設展をやっていた 日本住血吸虫の中間宿主 ミヤイリガイの小さいことに驚き、 この貝が中間宿主であること突き止めた先人の努力に感動。 ネットで日本住血吸虫について調べまくった。 いつもは読まないウィキペデ…

違う道を進んだら (タイノエとオオグソクムシ)

違う道を進んだら 遙か昔は 同じ仲間? タイノエとオオグソクムシ 「寄生性」と「自由生活性」 標本が寄生虫館で並べて展示されていた タイノエは 魚の栄養をちゃっかりと 食べるものには不自由しないけれど 寄生した魚の中で暮らすしかない オオグソクムシ…

痛みを忘れて泣いた夜

痛みを忘れて泣いた夜 足趾の手術で入院した時のこと 向かいのベッドのAさんは 膝を手術した八十才 世話好きで それにおしゃべり大好きで お子さん お孫さんの話やら ご近所さんの話やら 次から次へと 同じ話を何回も その中で一回しかしなかった話がある 六…

上野の地下道 (上野の地下道に行った時のこと)

上野の地下道 その日の上野の地下道は 上の賑わいをよそにして ひっそりとしていた 西村滋の『お菓子放浪記』で 孤児のシゲル少年がここで一緒に暮らしたのは 戦争孤児の子どもたち 西村滋は二〇一六年に九十一才で亡くなった 語る人がいなくなる 七十年の歳…

二〇二〇年 私にできることは

私にできることは 二〇二〇年 ウイルスとの戦い 私にできることは ウイルスを運ばないように 家にいること いろいろな人の顔が浮かぶ 離れて暮らす 高齢の義母 娘夫婦 兄夫婦 一緒に散歩する友人 足が痛いとき カゴを台まで運んでくれたスーパーの店員さん …

旅の思い出 万葉の岬(兵庫県相生市)

旅の思い出 万葉の岬 日がな一日 宿の窓から眼下の瀬戸内の海を眺めていた 長旅疲れで八十六才の母は寝息をたてている 父の故郷の海 島々が見え いくつかの舟がゆったりと浮かぶ あれが父が言っていた山だろうか 道にマムシがいて走って飛び越えたとか これ…

ど根性大根 (父の故郷で話題になった大根)

ど根性大根 相生…… 二〇〇五年 兵庫県相生市の大根が話題になった 亡き父を思う 固いアスファルトを突き破った相生育ちの大根 たしかにすごいけれど 明治大正という時代 十九才で 一人 旋盤の腕をひっさげて 故郷を離れ 遠い東京に根をおろし 一生を終えた …

うちのカブトムシ (はじめてカブトムシを育てた)

うちのカブトムシ 近くの大学の学園祭で買ったカブトムシ 丸々とした幼虫は 長い間 土の中 食べるものを食べつくし 春になったら糞だらけ 昆虫マットを用意した 初夏には蛹化した しかし 土の上で蛹とは! 慌てて人工蛹室作り 小バエがわんさか発生すれば 一…

夏の朝

夏の朝 クモの網に道を譲って回り道 そういえば、加賀千代女の俳句には 朝顔につるべとられてもらい水 というのが、あったっけ 江戸の昔のその朝顔は みごとに咲いたことだろう クモは虫を食んでいる

自然教育園のカラス

自然教育園のカラス 高校生の時 自然教育園の脇を通っていた ある朝 カラスがハトを囓っている 私の方をチラッ チラッと見ながら セッセと食べていた へぇー、カラスってハトを食べるんだ! さすが自然教育園のカラス 自然のことを教えてくれる しかし バス…

電車の中で (覚えていなくても)

電車の中で ぽっちゃりした 男の子 お母さんに抱かれている 電車の中のおとなりさん 目があった 私の頬が緩んで 笑いかけたら 恥ずかしがって お母さんにすがる それでも うれしそうに にっこりしてくれた 親子が立ち上がった 何ということもないこの一時を …

東京オリンピック 

東京オリンピック オリンピックと聞くとあなたを思い出す マラソンと聞くと なぜ? どうして? とあなたを思う かけっこは いつもビリの小学生には あなたは雲の上の人 眩しい人 オリンピックの表彰台に立った人が なぜ命を絶つことになったのか あの頃は ま…

クスノキの葉

クスノキの葉 五月 クスノキの大木から 役目を終えた葉が落ちてくる 樟脳の香りを嗅ごうと 積み重なった落ち葉に目をやれば 同じようでも 少しずつ違う 大きさ 色 ダニ部屋の膨らみさえも 樟脳も効かない病になったのか 点々と虫こぶのあるものや アオスジア…

オニグモと夜空、そして私 (不思議……)

オニグモと夜空、そして私 暑さの残る夏の夜 玄関脇の空間に オニグモ せっせと網作る おしりの先から出す糸で とても立派な網作る オニグモの上には星々が 幾光年先で燃えている 地球の片隅に生きるクモ 広がり続ける大宇宙…… 私も「不思議」の一員で 地球…

風呂敷 (小さい頃 風呂敷で遊んだ)

風呂敷 頭に巻いて マレーの虎 快傑ハリマオになった 首に結んで 正義の味方 月光仮面になった 六十年経った今 遊んでくれなくなったので 替え着を包んだり 荷物を包んだり…… 一枚の布になってしまった

上野の二人

上野の二人 上野の大きな噴水の脇を 二人が並んで歩いていた 星が瞬く空の下 一人は明治時代にエジプトから来たミイラ いつもは東京国立博物館に横たわっている 紀元前生まれ 男性で二千年以上前の人 名前は パシェリエンプタハ 永遠の命を願ってミイラにな…

操り上手

操り上手 カマドウマやカマキリに寄生するハリガネムシ カマドウマやカマキリを操って水辺に行かせるという 水中に産卵するために 哺乳類や鳥類に寄生するトキソプラズマ ネズミを操ってネコを怖がらなくさせるという 終宿主のネコの中で有性生殖するために …

教科書 

教科書 かつて教科書に載っていた明石原人が いてもいなくても 日本人は存在する かつて教科書に書いてあった腔腸動物の分類が 刺胞動物と有櫛動物に分かれても クラゲやクシクラゲは海を漂っている かつて教科書に載っていた源頼朝の肖像画が 違う人のでも …

寄生虫館で (東京目黒にある寄生虫館)

寄生虫館で 「こんなに小さかったんだ……」 日本住血吸虫の中間宿主 ミヤイリガイ 標本が並ぶ 寄生虫館 長い間 得体の知れない病気に苦しんだ人々 この病気にかかったら 「茶碗のかけら」と言われ 元に戻らず 死を待つばかり 病気の解明に乗り出してから百年…

杖 (リウマチになって)

杖 電車に乗る 席を譲ってくれる人がいた 気持ちがうれしくて座る 杖を持って知ったのは 人の暖かさ ビジネスバッグを肩に掛けている人だった 私は杖の握りをずっと見つめていた 譲られる側になってしまった 杖を持って知ったのは 病気になった哀しさ 譲って…