クモリン 小さな生き物のつぶやき

つぶやくように詩を作っていきたいです

旅の思い出 万葉の岬(兵庫県相生市)

   旅の思い出 万葉の岬

 

日がな一日

宿の窓から眼下の瀬戸内の海を眺めていた

長旅疲れで八十六才の母は寝息をたてている

 

父の故郷の海

島々が見え

いくつかの舟がゆったりと浮かぶ

 

あれが父が言っていた山だろうか

道にマムシがいて走って飛び越えたとか

これが父が言っていた海だろうか

造船所に働きに行く舟に乗ろうと 海に落ちた人がいたとか

父が話していた相生の昔が次々と浮かんでくる

 

今は母も亡くなった

瀬戸内の海は

今日も 穏やかだろうか

 

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ど根性大根 (父の故郷で話題になった大根)

   ど根性大根

 

相生……

二〇〇五年 兵庫県相生市の大根が話題になった

亡き父を思う

 

固いアスファルトを突き破った相生育ちの大根

たしかにすごいけれど

 

明治大正という時代

十九才で 一人

旋盤の腕をひっさげて

故郷を離れ

遠い東京に根をおろし 一生を終えた

 

相生育ちの人の方が

もっとすごいと

娘は思う

うちのカブトムシ (はじめてカブトムシを育てた)

   うちのカブトムシ

 

近くの大学の学園祭で買ったカブトムシ

丸々とした幼虫は 長い間 土の中

食べるものを食べつくし 春になったら糞だらけ

昆虫マットを用意した

初夏には蛹化した

しかし 土の上で蛹とは!

慌てて人工蛹室作り

小バエがわんさか発生すれば

一生懸命退治する

羽化して成虫になったので

毎日 毎日 昆虫ゼリーをあげた

 

うちのカブトムシは角が立派で男前

そんじょそこらのカブトムシとは違う

 

そんじょそこらのカブトムシとは違うから……

そんじょそこらのカブトムシのようし

クヌギの林の中を自由に飛ばせたかった

 

まだ夏なのに

動かなくなったカブトムシを手に乗せたら

軽そうなのに

重かった

夏の朝

   夏の朝

 

クモの網に道を譲って回り道

 

そういえば、加賀千代女の俳句には

 朝顔につるべとられてもらい水

というのが、あったっけ

 

江戸の昔のその朝顔

みごとに咲いたことだろう

 

クモは虫を食んでいる

自然教育園のカラス

   自然教育園のカラス

 

高校生の時 自然教育園の脇を通っていた

ある朝 カラスがハトを囓っている

私の方をチラッ チラッと見ながら

セッセと食べていた

 

へぇー、カラスってハトを食べるんだ!

 

さすが自然教育園のカラス

自然のことを教えてくれる

しかし バスに乗って高校に着く頃にはすっかり忘れた

 

数十年 忘れていたが……

ある日 こんがり焼けた鶏肉を囓ろうとしたら

外で近所のカラスがアァーアァーと鳴いた

突然 頭の中に あの自然教育園のカラスが飛んできて

私をしっかり見て言った

 

へぇー、人間ってニワトリを食べるんだ!